2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧
大阪市立工芸高校の図案科は普通校の入試と同じく、図画の実技は「テニスボールを描け」という問題だけだった。硬式テニスのそれを見た生徒はいない時代だから、大阪の子どもが草野球で愛用していた「やらこマリ」(軟式用の柔らかいゴムマリ。ついでながら…
小林秀雄の『近代絵画』(新潮文庫・1968)にあった言葉だ。中学図画の教科書にも解説としてあった『自然を、円筒と球と円錐で処理すること』は、中学の美術部にいて、クレーやルソーのマネをしていた僕には信じられない言葉だった。そう言われても具体的に…
ほとんど冗談で「行列論」をぶっている。物質も含めてあらゆるものは順に生まれたという考えだ。自然は同時を許さないと仮定するなら、人間の計測不可能な時間差によって順に生まれてくるのである。宇宙の星までもが。だからそれらは行列している。行列して…
アナウンサーが「注目を集めています」と言うたびに、何か変だなあと感じている。日本語として正しいか? 馬から落馬、のたぐいじゃないか。目を特別に注ぐ、のだからモトモト集めているのである。 僕らは5感を刺激されて初めて注目するように造られている…
朝鮮戦争のあった1950年ごろに造られた波止場は、ただ自然石を積み上げただけの構造であった。セメントはまだ贅沢な資材だったのだろう。何千万年以前のとも知れない石は、以来風雨にさらされてきたといっても、見た目も触った感じも変わりなく今もあり、こ…
ディーヴァーが好きである。好きになると盲目になるのか。「オッ、出た」と思ったのである。いさんで上下巻購入し、待ちきれずに車内で読み始めた。・・・しかし何かおかしい。彼はとんでもない新技法に挑戦したのだろうか。読んだことがある出だしだ。下巻…
煎餅屋に続いて、その後の話。前に音楽少女の背中を撮ったのは昼間でした。夕暮に見直すと花屋だった。ここじゃあ演奏会は無理だなあというだけのご報告。あの少女の行末ほどには興味がないでしょうが、事後も大切に扱うわがmanga日記の方針からこのような記…
先日際物の宿命とあってあせってご紹介した人形町甘酒横丁の煎餅、その後である。はやくもお仲間が出品されていた。今回は背広姿の店主が店先にいる。40代後半にみえる大柄な人物で鷹揚な唐様?の8代目という雰囲気であった。 「うちは代々の首相をそうやっ…
京都には世界遺産がたくさんあるらしい。けっこうなことだ。だけどもそのことを知って訪れた日本人のみならず、外国人はがっかりしてないだろうかと気の毒に思う。遺産は建造物に限られ、街はそこらと同じ醜くさで新建材、看板、電柱が充満しているのだ。今…
新型のパイプオルガンではない。見たとおりの煙突。住宅地のど真ん中にある。エアコンの取り付け方を見ても、どうも泥縄というか無計画というか何してるんだろう。小さな看板に珈琲という字が組み込まれていたように思う。まあそういうことをしているのだ。…
現代美術館での特撮展は大盛況だったようだ。たしかに充実した展示で、女性客が多かったというのは意外だった。同時に弥生美術館では大伴昌司展があり、あのへんを偏愛する人には忘れられない年になっただろう。ただ大伴のほうは特撮とは違い印刷物関連の展…
みんな効率をあげるのが好きだ。洗脳されたのか、本能なのかは不明である。小さい時から効率の悪い行動をしていると、愚図だトロイだ間抜けだと表裏でののしられ、己にも「また早とちりだ。バカ」とか言ってしまう。日誌に書き反省し明日は効率をあげると誓…
時事ネタは寿命が短いという。政権発足時に、なに勘違いしたのか日本橋人形町は甘酒横丁の老舗っぽい菓子屋にこれなる物体が出た。680円という割り切れない値段である。その先読み能力も不気味だ。どんな店主なんだ? 店主が応援したにしろ茶化したにしろ不…
山口瞳が先生と呼んでいて、九州大でドイツ文学を講じていた、難しい顔のおじさんが高橋義孝である。この人が夜のテレビに出て、ある人が何処かに落とした鍵がしばらくしたら自分の手に戻ってきたのを例にあげて『これが文化というものだ』と結んだのである…
ビニールハウスが珍しいのではない。かといって直接入った経験は少ない。 ここは今は自給ぶんの野菜だけを作っているらしい。 見た瞬間に所有欲が湧いてきた。先日IMFの会議場にもなった、設計料がバカ高かったらしい国際フォーラムの全面ガラスから差し込む…
何だ? って思うでしょ。 また変な親父が近所に断りもなく、って思うでしょ。 僕もそう思った。でもちょっとやってみるかなあ、とも。 保育園の非難用滑り台らしい。ごく地味な建物にこんなのが付いてるのが 現実の典型的光景というか。 フニクラフニクリじ…
小さな島であるから住んでる人も少ない。 生活用水は井戸で充分で、電動ポンプの時代だから元からある井戸から汲み上げているのだろう。住んでる場所は海っぺりみたいなものだ。水は多少は塩っぽいかも知れない。まあそれで死ぬことはあるまい・・・長寿の地…
『ふるさと』を聞く機会がふえた。僕はどちらかといえば二重唱の『おぼろ月夜』派だけど。そんなことはおいて、たしかにかつてはウサギがいた。文字通り歩いて遠足に行き、追いかけた。小川にはコブナもいたろうがウナギを釣った。しかし歌には向かないなあ…
「わー、魚だ魚だ」「いっぱいいるよ」「水がきれいなのね」「釣ってみたーい」・・・と騒いでいる。たしかに下船した桟橋からいきなり魚が見えるというのは都会の子どもたちには驚きであり、刷り込まれた猟人意識がよみがえるのかもしれない。 ここの海には…
「カメラマンなんてなるの簡単なのよ。カメラ持ってりゃいい」 と武井カメラマンはかつて笑ったのである。見ろカメラマンだらけだ。 その中でボクにもカメラマンをやろうという助平根性はあるから、 カメラマンがねらいそうなアングルを真似て撮ろうとする。…
♪こら−!! サトシトシミツ! じゃないや鉄也!なんばしとる、とオフクロの声がぁぁ♪ する部屋である。「立入禁止」ってか。これで? どこへ立ち入れるってんだよ。新聞読みかけのテーブル、530000と書いた謎の箱、使い易そうなぶらさげテープ、洗濯バサミ、…
高い脚立に乗って庭木の散髪をしていたのは80もとっくに過ぎたかという爺さん。 海も山も大工仕事も竹細工も人の3倍はこなす万能の現役選手である。 たかが1メートルでも足がふらつく恐怖症の僕からみると天狗だ。 「こいつを小さい時に山から移してきたら元…
ほろ酔いでふらりふらりと20分間くらい歩いて帰宅するのはいいものである。 ♪月がとっても青いから、とかは歌わないが。まあそんな気分だ。 とくに常盤町あたりは東京1だろうと、いつも酔った頭でランクづけして、ひとりで納得しているのである。常磐町。奥…
銀座三原橋交番の背後に、全身真っ黒のビルがあった。周囲との関係で目立っている。ここまで徹底しているのは珍しいが、通行人はまったく気にしない。 僕はこのビルのベランダでいつも数人の煙草吸いがボンヤリやっているのを面白がって見ていた。彼らも目立…
井戸に出会った人が発するセリフは決まっているようだ。 「おー! なつかしいー」「これってまだ飲めるの」「昔の人は大変だったね」 これくらいが上位の3つだろう。 僕が世田谷に下宿していた50年前にはモーターで汲み上げた井戸水を 炊事にも使っていた。…
男は度胸だ、などと言われてロクなことはなかった。そもそも「あいつには度胸が無い」とバレていて言われた回数が少ないのは幸いだったのである。僕はゴルゴ13の「臆病でなければ生き残れない」というセリフが好きで、信条にもしている。 7歳の冒険時代に磯…
僕は自分がセコイせいか、あらゆる場面で八百長はあり得ると考えている。世界歴史を動かす政治の次元から縁台将棋のレベルまでそれはある(と考える)。それを良いとか悪いとかいうのではない。そんな思考法でくくれる問題ではないのである。八百長は前もっ…
今夏はラジオもテレビも新聞もない家で過ごした。 10m先に静かな湾がある家だ。 早朝に家のまわりの草花をとって持参の花器に投げ込み写真を撮る。 まだ朝の光に赤みがある。湾ではときおり小魚がはねる音がする。 場所を変えたり、角度を変えたりして撮る。…
プッチーニ最後のオペラ『トウランドット』の2幕トップに長々と3人の官吏、ピン、ポン、パンの重唱が置かれプッチーニ節のこの面が大好きな人には大切な聞き所となっている。 内容は嘆きだ。氷のようなトウランドット姫に求婚して落命した幾多の王子たちの…