ピンポンパン(20012103・19度5:30)

 プッチーニ最後のオペラ『トウランドット』の2幕トップに長々と3人の官吏、ピン、ポン、パンの重唱が置かれプッチーニ節のこの面が大好きな人には大切な聞き所となっている。
 内容は嘆きだ。氷のようなトウランドット姫に求婚して落命した幾多の王子たちの悲劇が続くことにもうつきあいたくない、というのである。そしてもしこの血の匂いのする宮廷から引退させてもらえたら、故郷の竹藪に囲まれた清浄な我が家に帰りたいと、ポコポコリンリンみたいな冗談っぽいが絶妙な伴奏に乗せて歌うのだ。
 
 プッチーニはアジアに来たことないのに『蝶々夫人』を、そして北京を設定した『トウランドット』を作曲した。当時日本の歌姫といわれた歌手がヨーロッパ公演をしていて彼は楽屋まで訪ねている。そして日本の楽曲の譜面を送って欲しいと懇願し、入手した音律を自在に組み入れ自分のアジアをつくったのだ。ただ一度アメリカには実際に渡って『西部の娘』をつくったが僕は芳しくないと思っていて、ここに僕の幻想びいきの根があるのかも知れない。ただプッチーニは「日本の歌手には蝶々夫人は歌わせるな」と言ったという。歌姫のノド声にまいったのだろう。わかる。
 これってピンが言っていた家の雰囲気出てるなあ、と田舎道で思った。ピンの退職金と恩給額をおもわせるし、階段の角度も宜しい。でもこんな所で彼らを思い出すとはね。