2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

魔笛の家(2013331・6度6:05)

モーツアルト最晩年の、とてつもない傑作『魔笛』はどこかの庭の小さな小屋で作曲された、という伝説はどうやら嘘みたいだ。だがそう思いたいほどに天上的に美しいアリアの連続である。アマデウス・モーツアルトのアマデウスは「神の子」という意味らしいが…

小屋の本(201341・室温18度3:00)

世界に小屋好きが大勢いるのは想像通りで、それには驚かないし、小屋のデザインもまあ想像通り。道楽は道楽止まりだから「勝手にやってなさい」と、そんな道楽はできない身のこちらは本で見ているだけなのだが、1枚だけ「やられたなあ」という感じのがあった…

大五郎(2013329・5度6:50)

『ポパイ』を創刊した1977年の編集部に大量のウニを抱いてお祝いに駆けつけた男がいた。「こんなに感動したことない」と日やけした男は叫ぶように話し、「そんなに遠くから!」と皆は呆れ驚きつつも丸喜ビルの狭い部内に不思議なうれしさが広がった。男はヨ…

事件(2013330・-2度5:10)

夢野久作の初期作品に『田舎の事件』がある。彼が地方新聞の記者をしていたころに取材した事件?を膨らませたと想像する短編の数々だ。すっとぼけた味がとてもいい。 地方にいるのだから地方新聞を読む。各方面について高みから偉そうに煽るばかりの色合いが…

個人情報(2013327・12度11:30)

70男が朝6時からワカメを獲りに行くという。漁場は教えてくれない。崖をにじり降りてしか行けない岩場から30キロを担いでよじのぼる。「ついてこれっだか? うー」とアゴを突き出す。あっさりと降参して食うほうにまわる。今はこれくらいの大きさ。5本もいた…

アイ・ターン(2013328・5度4:20)

町にこれまで縁のなかった人が入ってくる。街ではさかんに活動していたと想われるタイプの人も多い。馬を乗り回したいがために移ってくる人なんかはめずらしいが、それもいる。ある人は宅地、ボートだけではなく、山地も買ってしまう。それはいいが山なんか…

場所は決まった(2013325・10度9:15)

「君は釣りはどうだ?」「大好きです。ただ60年間ご無沙汰してますが」「磯ならこれで充分だろう」糸や用具の使い方の講義つきで竿をいただいた。 隣家の90歳になった釣りのにわか師匠は45年間この町で活躍し、敬愛された名医である。今は子息が医師を継いで…

ここに花あり(2013326・3:00)

『ここに幸あり』という歌謡曲の傑作を思いだす光景だった。海沿いの地区のはずれで出合った。あと少しで「行き止まり」の標示がある場所だ。誰がここまでこれを見にくる、というのだろう。 だけど誰かが必ず来るから、人は花を活けるのか。誰かのために活け…

都会ずれ(2013324・10度17:00)

巨大岩牡蠣をサザエとともにバケツ一杯いただく。潜って獲ったのは60男だ。牡蠣やサザエの表面を観ていると、近くの岩の表情と似ているのに気付く。 「あ、桜」と思ったら杏(あんず)だという。ふっくらしている。「こいつは落ちた実を食うだけんね」60男が…

雑草園(2013322・北東向き14度10:00)

借家の庭の隅に電柱が立っている。「NTT諏訪幹15H2 Eneralaヒガシ支9」と標札にあるが、むろん暗号だろう。 この根元が寂しげなので雑草園をつくることにした。といってもそこら辺の適当な草を20種ほど引っこ抜いて移しただけの1時間庭師なのだが。まだ本格…

石を愛でて(2013320・北東向き7度6:05)

島なのに多様な岩がある。全国屈指ともいわれ、黒曜石では荒稼ぎしていた。ということは多様な石ころもあるということで、それを愛でる人も出てきて、撮影なんかする人間もいる。これがその例だ。たぶん「愛でる会」でもあって、自慢しあったりしているに違…

何処にもいる(2013318・北東向き12度12:00)

何処まで行ってもレイアウトマンがいる。人々はレイアウトがたぶん好きなのである。とくに男は。昨日も道端で見つけた。これを見よ、と言わんばかりの態度で置かれている。だが素材はいいのだが置いただけで、「作品」にはなっていない。もう少し真剣になっ…

雁皮(2013319・北東向き10度4:00)

楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)は和紙の材料になる。それは知っているが、どれもしっかりと観たことは無い。昨日三椏をいただいた。少し中華ふうであるが、おいしそうな花である。 出雲に安部栄四郎という和紙作りの名人がいて、たしか人間…

クラーク・ケーブル(2103316・北東向き14度11:15)

「お宅の庭に転がってるケーブル巻みたいなの、雨ざらしのでいいんですが、2つ分けてもらえませんか」 「何にすんの。ああ、いいよいいよ。こないだ捨てたばっかだからあるかなあ。新しいのを持って行けよ。転がしていけばいいよな」 久しぶりに輪転がしを…

誘われて(2013317・北東向き-3度5:30)

過疎地に行くほど車だけが頼りになる。僕は運転できないから、ちょっとした用には自転車を使おうとした。しかし海辺の道ではとんでもない突風がくる。なだらかといっても坂道も多い。考えたら「また歩けば良いのだ」と、あっけなく悟った。10歳までに車はお…

お供え(2013315・北東向き13度8:30)

庭で拾ったハゲて朽ちるだけの椀に、霜が雪のようにたっている雑草を土ごと盛って供物とする・・・などというバカな儀式をしている側を、子供たちが連れて通学していく。「雑草という名の草はない」と昭和天皇が述べられた言葉は、何故だか忘れられない。だ…

朽ちると朽ちさせると(2013313・北向き12度・10:15)

庭の隅に椀が落ちていて雨に打たれていた。朽ちつつある。僕らは万象が朽ちる最中に、やはり朽ちつつ在るのだが、そうは思いたくないのか、無視して高価なローヤルゼリーなんぞを求めニタニタしている奴もいる。 だが朽ちるのだ。工芸高校の図案科の先生は何…

舞台の設営はできた(2103312・北方向12度・11:45)

庭に板を置いた。厚さ4cmのカツラ材。将棋盤にも使うと聞いた素材である。横1m80cm、縦1m20cmで重さが40kgある。うかつに持ち上げると危ない。 広い部屋にいた頃につくって、だんだん狭い部屋に移って居場所が無くなり、借りた倉庫のすみで眠ったり…