舞台の設営はできた(2103312・北方向12度・11:45)

 庭に板を置いた。厚さ4cmのカツラ材。将棋盤にも使うと聞いた素材である。横1m80cm、縦1m20cmで重さが40kgある。うかつに持ち上げると危ない。
 広い部屋にいた頃につくって、だんだん狭い部屋に移って居場所が無くなり、借りた倉庫のすみで眠ったり、子供たちのイタズラ工作の台になったりしてきた。
 
 むろん最初は仕事机だったが、大きすぎて板に間借りしている案配で、どうも位まけをしてしまう。雑誌作りには合わないのだった。もっと芥川賞ねらい?の作文机にふさわしい。要するに難しいことを頭でこねまわし推敲していく板らしいのである。それもこれを誕生させた30年以前ならいざしらず、いまやこねまわすのはキーボードと、何インチかの画面があれば良いという流れで、やつは長期にわたっての浪人暮らしであった。家人からは転居のたびに粗大ゴミ視される始末で、味方にとってもツライ日々であったが、ここの庭は悠々と泳げる広さだ。ただ彼が森にいたころにもどって雨露をまともに受けなければならない状況になったし、人力によって無理矢理接着された兄弟たちとは離れることになるかもしれない。それもいいではないか。

 これを見た町の人たちは「もったいない」と嘆くが、主人は冷然と「これからがお前との真の勝負だ」とつぶやきながら毎朝露玉を拭いてやるのである。ともかく青空アトリエ、食台、酒台、昼寝台・・・・何役もこなす役者の舞台が設営された。まもなく脚もはえる予定だ。