朽ちると朽ちさせると(2013313・北向き12度・10:15)

 庭の隅に椀が落ちていて雨に打たれていた。朽ちつつある。僕らは万象が朽ちる最中に、やはり朽ちつつ在るのだが、そうは思いたくないのか、無視して高価なローヤルゼリーなんぞを求めニタニタしている奴もいる。
 だが朽ちるのだ。工芸高校の図案科の先生は何を考えたのか、16歳の少年達に春一番に「秋に提出せよ」として、テーマ「朽ちる」を課した。それ以来課題にしたまま半世紀が過ぎた。

 たしかに萌えいずる春はまぶしく美しくカワイイが、時に憎たらしくなって、ガキのころは満開の桜花に投石したりもした。いまは少しは「無常ということ」も理解できるようになって、そんなに急がなくとも、いずれ散ることを知っている。そればかりか8寸釘を板に打ち込み、海風にさらして錆びさせてみようなどとも考える。こっちのほうが速くボロボロになるのだろうか。変な奴とへんな競争を始めるのも、町一番の変人になるためなのだと、聞かれたら説明するとしよう。