大五郎(2013329・5度6:50)

 『ポパイ』を創刊した1977年の編集部に大量のウニを抱いてお祝いに駆けつけた男がいた。「こんなに感動したことない」と日やけした男は叫ぶように話し、「そんなに遠くから!」と皆は呆れ驚きつつも丸喜ビルの狭い部内に不思議なうれしさが広がった。男はヨットを持ちダイビングをし、小さな珈琲喫茶店も開いていた。当時25歳くらいではなかったか。
 
 その彼が毎日のようにこちらの様子を見にくる。「珈琲焼酎知っとるかね」「珈琲割りならときどきやるよ」僕はジェフリー・ディーバーのファンで車椅子の主人公リンカーン・ライムがスコッチのダブルを珈琲で割ってのむのを真似ているのだ。「いや割るのじゃなく、癖のない焼酎に煎った豆を適量入れるだけだ」それがこれである。2日めの大五郎が朝日に映える。昨宵は豆が沈むのを待てず、つい吞んでしまった。それでもイケル。

 町会議員になった彼は議会の日はバリッと本格的に決めて、町いちばんの男前になって出る。『ポパイ』も有り難いことに寿命が長いなあ。