頂門の一針とか?(2013815・敗戦記念日碑でもなく)

 何ですかね、これは。うらみ重なる阿奴に一針を、ってか? 
 たしかにそう見えてもしかたがないが、ぜんぜん違う。
 住んだ築地も清洲橋も海そばだった。海といえば塩、鉄は潮風にあたると・・・ここらじゃあ、内陸側よりサビが速いか? あるときそう思った。僕はサビが好きで。波板のサビ壁を撮影して「赤い家」と題して集めてもいる。ベランダに釘を置いて錆びていく様を観たい。白い石膏塊に立てたらどうか。石膏を買ってきた。あとは簡単なはずだったが、何だかマンションのベランダでは、塩の香りがときどきするほど海が近いと言ったって、気分がなあ。
 島では海から15mの地に住んでいる。潮風あたり放題だ。こりゃ錆びるの速いぞぉ、嬉しい。石膏は中止して、さんざん波と闘って丸みを帯びて浜に打ち上げられた木片を拾ってきて舞台にした。黒澤映画『赤ひげ』に出た杉村春子演じる婆さん芸者の白塗り首みたいな化粧をさせて、1本95円(計り売り・店で既に少し錆びていた)長さ12cmを打った。錆びたのを腹に抱え込んだ事情ありふうの板もある。これなる愚行を怪しむ「?型」のもねじ込んで置くあたりに、作者の優柔不断ぶりも出ている。顔つきが商品っぽいから1個950円なら買っていく気の長い同好人が出たりして。