島前神楽(201387・2畳が舞台)

 神楽の正しい歴史は知らない。ともかく隠岐の神楽は禁止されてのち、プロの舞い手が少数となり、保存会によってやっと残されている状況らしい。音は太鼓と金属の鳴り物だけだからか、豪壮でリズムの刻み(というのか)がたたきつけるように強い。能登の鬼太鼓と荒波にあらがうような、一体になったような姿勢が共通している。
 島前の神楽の舞い手の舞台は2畳ぶんしかない。それをどう活かすかが見せ所である。すると全身の「切れ」が課題になる。六代目菊五郎三宅坂国立劇場に彫刻がある)の鏡獅子を古いフィルムで観たことがあるが、名優の「切れ」には感嘆した。3歩ほどで反・回転をくり返しつつ陶酔感(あっちへいってしまう)をあらわす。公民館での特別公演では90歳近い舞い手の最後かもしれない姿をみた。静かでありつつ荒々しい心を含んでいて目が離せなかった。