ただ立っていた(2013428・隠岐の海小結昇進が新聞の一面でデカデカ17度)

 小学3年3学期まで在籍した学校に行ってきた。さすがにそのころ既に大木であった桜は代替わりしてまだ青年期のようだった。「もう孫のもいるよ」そばで会った区長が教えてくれる。
 廃校となったあとは特産高級梅干しの工場として半分は使われ、残りは資料館と名付けた古い農具のしまい所になっている。両方とも閉まっていたので、窓にカメラを接着して廊下を撮った。

 この廊下で乱暴狼藉をくり返し、この廊下に立たされた。それはいい、反省する。だけど命じた先生はそれを忘れてしまったのである。そうするうちに日が落ちてきた。所用で教員室を出てきた教員中ただ一人オルガンが弾けた若い女教諭は青くなったくせに「まだ立っていたの?」なじるように言った。そりゃないだろう、仮にも服役中の身でありますよ。

 暗さを増してきた山を越さなくては家にたどりつけない。まるで芥川の『トロッコ』の世界である。森はキーキーギャーギャーと鳴く。遅い帰宅に母親はべつだん何とも言わなかったが、忙しかったのだろう。親父は大阪へ出稼ぎに出ていてその頃はいなかった。いたら大騒動になったかどうか、日頃の素行に鑑みて無視したかもしれない。それにしても廊下に立って何を考え、見ていたのだろうかとランプを見ながら、ちっとも悲しくなんかなかったなあと思った。