2分で飽きる(201344・室温16度4:30)

 東京でも、たぶん何処でも、景色を眺めてじっとしているなどということはできない。2分間がいいところだ。スケッチでもすれば別だが、今さら絵手紙でもあるまいし。花葉もそうだ。ふーん、なんて言って2分間だ。すぐ団子に目がいく。
 まったく風流心がない奴なのである。ツルゲーネフの『片恋』だかにそんな無粋な男が出てこなかったか。いやな男だった。
 だが「この道をずっと散歩道に認定する」と勝手に決めた道があって、そこは勝手に道具を持参して、道を占領せんと張り出してくる無礼者を刈り込んだり花葉を採取したりしている。
 いずれ話すが「ワケあり」の、町から大金をかけた末に見捨てられた道なので、義侠心を出して個人的に面倒をみることにしたのである。するとその道の3日前と、景色は、花葉は違ってないか、と診断することになる。違った部分があれば新発見ということになるから2分間よりは頑張って注視することも増えてくる。
 
 その道から見える海は静かな時が多い。ハーンも愛した海だ。浜辺はなく山から下りることができないので、眺めるだけだ。2分間。これをくり返していると、けっこうな時間になる。すると景色といえども何か感じることもあって、不思議である。
 花もそうだ。お持ち帰りしても、すぐにダメになる柔なのが柔柔と咲いているのなんかは、撮影のみの接触で終わらさざるを得ない。黛じゅんにそんな歌があったなあ。あたしの唇に指先で触れただけとか・・・。それでしばらくは見てしまう。くやしいが少しずつ取り込まれて、60年以前の、美しいものはそれしか無かった時代に還りつつある。