ベッキー（2013225・−3度3：55）

　細い声がするほうをみると生まれたばかりの奴だった。なのに煮干しがあてがわれている。拾っていかないわけにはいかない。猫用ほ乳ビンなんてものがあるのを初めて知った。そいつを見た千葉の担ぎの八百屋が「こりゃメスだんべ」というから『ベッキー』と名付けた。トム・ソーヤのGFの名である。
　ところがしばらくするとオスだとわかったが、まあいいだろうとそのままにした。あいつはドアに下げたベルを立ち上がって鳴らし開けさせ外出し、帰宅時もドンドンとたたいて酔っ払いのように知らせた。男なら夜遊びはしかたがない、何処なと行けと行かせた。
　
　サイトウ・タカオの奥方が描いた猫漫画がはやっていて、猫人情がきめこまかく語られ、やつらが生きている場の報告があり、そういうものだろうなあと推測した。やつもそこで家庭をもったのだろう。帰ってこない。もう25年もなるのに。

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