古いから(201328・3度5:25)

 

 撮影してると(古い物が好きだなあ。古いからいいのか?)と問う声がする。自分から自分に。(古けりゃ何でも良いのではない、この縦長の窓だよ、いいのは。)
 『アンアン』創刊のころショッピング・ガイドというコラム集合頁を担当していた。キャップは赤木洋一さんで、後に社長になった人だ。担当は淀川美代子さんだった。彼女が「ねえ、窓ってカワイクない?」と言い出して田園調布あたりの洋館の窓を可愛がった。渡された見出し案が「窓」だけで、何ともおさまりが悪いからと無断で「窓たち」にした。この言い方が流行ったことがあったが、たんにレイアウト上のスペースかせぎだったのである。

  上下とも解体寸前の窓である。上の窓の枠の切り方はピリッと締まっている。建ったあとでこの家の親父が付けた(に違いない)みじめな鉢置き台と比べて造型力の格がちがう。下の写真の金属の窓枠は大量生産品だからかまだ所々でみるが、少なくなった。花がくると余計につましさが増す(と思っている)。
 『アンアン』からそんな悠長なコラムはとっくに消えたが、間もなくこの窓たちも消えるのだ。こんな部分でも何かを表現してやろうなんていう人も、愛でる酔狂な散歩者も、もういないのである。