日本語のひびき(201322・10度2:10)

 「あの家では こどもらちが さえずって おった だけんなあ」

 【さえずる】・・・広義では、女・子供がやかましくしゃべりたてることも指す。

 と、辞典にもあったから方言ではない。だがこういうふうに使ったことも聞いたこともなかったから、驚き、いたく感動した。ひびきが優しいのである。
 「ウルセーつうんだよ この野郎!」も時と場合と人柄によっては優しいし、「やかまし あほんだら モー!」も「お父さんはお人よし」のアチャコが言えば優しかった。
 でも「さえずる」にはかなわない。世のお人好しのお父さんも黙って新聞読みつつ、台所あたりで今日も元気に騒いでいる婦女子の声を聞き「これが幸せちゅうもんか」と頭の片隅で思っているはずだ。つまりその時「さえずってる」ように彼には聞こえているのだ。小鳥のさえずりが不快だという人は入院したほうがいい。どこかが病んでいる。発声音だけで優しさを表現する外国語が多いと聞くなかで、日本語は単語そのものが美しく優しいのである。

 村上隆の番組『カンブリア宮殿』にその言葉を自然に使った女性が出ていた。じつは山でも海でも名人といわれた従兄のカミさんである。