火の用心(201310029・2度2:50)

 日本橋浜町に炭・薪屋がある。
 10歳まで風呂は木造か五右衛門で、薪で湧かした湯であった。薪のいちばん良いところは木の燃える香りが漂うことだ。その中で入浴するのは今や贅沢である。居間には囲炉裏があって、ここでも炭や薪をくべた。薪取りは一家あげてのイベントだったから、チビでも数本を背負って山に通う。薪小屋にはその成果が積み上がっていて、子どもでも安心したものだ。

 日本では森が死につつあるという。山の無駄木を薪にするべく取り払い、風を通したりする人が減った。何百年先をみて木を育て、山を守る人も減ったのだ。その代わりに洋材を買い漁る国になった。そればかりか先祖代々が祈り守ってきた広大な山々に何万年たっても消えない汚染物質を降下させ、禁制の地にしてしまった。 
 戦後僕がみてきた国の施策の中でも林野に関することごとくが最悪だ。それの仕上げが現事態にみえて、取り返しがつかず、ただくやしさが募るばかりである。
 ホントにどうすることも出来なかったのだろうか。出来ないのだろうか。壊滅に向かうエネルギーが弱まらない理由は何だ。街は消費するだけの場所である。高級店・高級マンションの<薪の香りと新酒を味わう会>か何かのために薪が売られている。これも洋材だろうか。