日本人がいる(201310012・−1度6:35)

 日本人は日本人論が好きだと聞いたことがある。みすず書房から出ている『かくれた次元』では他人との密着度の許容度の高低が国によって違うとあり、日本人は高いほうだと理解し、何となく納得した。身に覚えがあるのである。例えば厳冬の夜にフンドシひとつの男どもがイモになり湯気たてて縁起物を奪い合う祭なんてのが、同じ厳冬のフィンランドあたりで行われる図は想像できない。フンドシでなくてもだ。臨海学校で水着になったついでに砂浜で嬉々として相撲大会などするのも日本人だ。それを隠れた次元だと外国人にいわれると、その日本人論にうなずいたうえに嬉しくなる傾向が僕にもある。別段隠してきたわけではないですよ。
 
 ビジネス街のど真ん中でこんな看板をみつけると、これも僕なりの日本人論そのものだなあと思ってしまう。今ふうの近辺国家的権利主張一辺倒的図々しいのもある中で、蹴飛ばされても黙って耐えてるコイツは偉いと思える。声は小さいが分かる奴には分かる、こんなつましい生き方をしてきたし、これからもこうありたいと、この節の日本人が願ってる姿に見えるのである。相手を言い負かすのがうまい国に急にはなれないのだから。『隠れた次元』の筆者も近辺国家的権利主張一辺倒的図々しい国を訪れた後でこれに出会ったら喜んで撮影したことだろう。だから僕らは隠しちゃいないんですよ。