脳が造らせた階段(20121210・1度5:30)、

 日本橋人形町は戦災を受けてない町だ。江戸期には複数の歌舞伎小屋があって遊郭もあった。そのせいで、こういう作品に出会えるというのでは、たぶんない。いやまあ、じつは作品でも何でもないのだが。変型階段である。変型だが昇降し易いばかりでなく、昇降してみたい階段のように感じる。安全かどうか。この不規則な段差は気まぐれではないか。ご隠居の遊びではないか。
 
 では吟味してみよう。このスペースで3段にしたらどうだ。きつい。4段では1段ごとの奥行きが狭すぎる。するとこのように螺旋状に段をつくるのは理にかなっているのがわかる。その上に最初と最後に足を置く段だけ広くすることで、人体の力のかけ方に合致していると読んだ。つまりこれは脳と目の読みと、動作の記憶から生まれてきた唯一の正解ではないだろうか。良いデザインとはこうした物だと勝手に決めた。白い割烹着の女人がこの階段で体をちょっとひねって昇降する姿も様になる。ここの店はうまいものを出すに違いない。