解体(20121207・11度9:40)

 生後40日で隠岐島疎開した。させられた、が正しいか。親父は戦地へ、4人の子と母親が親父の生家に転がり込んだのである。大変だ。祖父母は健在であった。祖父は江戸末期の生まれで、生まれたころは龍馬も生きていたのである。僕はこの江戸生まれで桶職人の祖父の膝で育ったのだが、親父が明治生、オフクロが大正生だから、人生は長い。
 転がり込んだ家は写真のに似ていて、元は寺子屋だったという。解体して焚きつけにしてしまったのは僕である。『アンアン』や『ポパイ』を都会で作っている間に隠岐の家は廃屋状態になった。親父は戦地で命を縮めたせいか、はやくに亡くなったので、僕の手で解体するほかなかった。
 最後にのこった大黒柱にロープをかけて、集落の人たちと引き倒すと、地をふるわせて八方に響く轟音をたてた。忘れられない音である。こんな無責任男にも忸怩たる思いはあるのだ。すまぬ。

↑この家もこのあとすぐに消えた。