石の味(20121128・4度2:45)

 「若いころは石の味なんかわからなかったけども」とお婆さんがつぶやく番組があった。その婦人が住んでいるのは石の町と呼ばれる生産地である。石だらけの町で育ったが、逆にそのせいでか石のどこがいいのか、わからなかったのだ。
 「石の味がいいね」というと「年寄りくさい」と言われる。そういう人は嫌われる。でも石の味が年とってやっとわかってくる人は多い。わかるとつい言いたくなるのは人情ではないか。嫌うことはあるまいに。日本は若者文化だけを偏愛する国だからかなあ。毅然とした大人の少ない国なのである。むろん年寄りイコール大人ではない。ここが難しい点だ。石の味は大人にしかわからないということもない。ただわかるのは大人に多いというだけだ。何故だろうか。
 
 石の味がわかる人が楽しめる浜辺があった。グローバルそのものの光景だ。多様ということである。だったらかっこつけてグローバルなんていうカタカナを使うことはないな。この小さな集落だけでもじゅうぶんに多様だ。それで困ってるほど多様だ。それがわかるのが大人というものであり、それを知ったからこそ石が味わえるので、逆にはならない。