いちかばちか(20121127・9度3:45)

 何とか街金に頼らず資金の目処はついた。だが余裕はない。線路の向こう側にしか物件がなかった。昼間見るとますます村八分ふうだなあ。この条件でも「男になってみろ」ってか、アニキよ・・・。おんぼろぼろろになるかも知れんが、いちかばちかだ。
 もとは商事会社兼倉庫だった2階だて木造モルタルである。どうすっぺか。店名はふる里の地からつける。だけんど「道」を付けないのがミソよ。「北海」ってどこだ? しかし「産地直入」が売りだかんな。産地つうたって色々さ。千葉だって産地だもんな。少しだけは北の海だし。色はハイライトの青にしたかった。おれは今でもハイライト派なんだ。「ハイ、ライト消してよ」ってか。知ってる? あいつが勝手に変えやがった。あいつの親父にも借金したから弱い。だけど北海の色じゃねえよ。原宿だろうがよ。
 倉庫気分丸出しのガラス窓に扇面を配したアイデアはオレ様のだよ。決まったね。どう見たって飲み屋だ。色が違えば連れ込みだって? おいおい。あと5万あれば提灯のでけえのをよ、1本奮発したかったなあ。んま平沢センセが当選の暁には宴会だって期待できるし前途は明るいぞ。あはは。

 床野潤三に千葉方面の小さな駅前に寿司店を出した若夫婦の物語がある。結局は何も起こらず凡々と時が経過していくだけなのに、床野一流の腕にかかると平凡さが大サスペンスとなるのだった。恐ろしい作家である。『流れ藻』だったか。上の駄文を書きながらそれを思い出した。