村ねむる(20121124・8度4:30)


 「にょいん露わに 村ねむる」とうたった加藤イクヤは最近亡くなった。俳人であり、日本テレビの照明部長で、イレブンPMなんかを照らしていた。新宿2丁目のバー「ナジャ」にスーツ姿で現れる珍しい人であったが、部長なのだからしかたがないのだ。そしていつも黙って、眠って、飲んでいた。
 「にょいん露わに 村ねむる」をみなは気に入って「それにつけても金ほしさよ」と同じく、何にでも付けて唱和していたが、深夜のバーでだから許されたコトだ。しかし酔いがさめて考えたら恐ろしい12文字で、こっそり一人で試してみられたら良い。上の5文字は忘れてしまったが、無くてもよいのがご理解いただけよう。何だか分からないのだが、凄いのだ。僕は白手袋した田中邦衛の殺し屋が、日中のある村で一声も発さずこコトをなし、去っていく勅使河原宏の映画『落とし穴』をいつも思い出すのだが。
 この加藤にコピーふうの句を依頼し『アンアン』のファッションページにデカデカと1句ずつ飾ったのが堀内誠一である。加藤が堀内に惚れてしまったのもわかる衝撃の見開き8ページであった。まさか「にょいん」の語はなかったが。

↑2句をご覧頂く。これが『アンアン』ですよ。これは重大事件だと感じて、とっさにコピーとって40年間楽しんできた僕も変なやつだが、その点では堀内さんにかなわない。ついでながら赤い数字は堀内さんの手による。じっさいのページでは38級の中ゴシック+タイポス37で組まれた。立川ユリがにっこり笑っているページだ。