テトラ怪人(20121111・10度5:30)

 テトラ怪人は、大海原から打ち寄せる海波の姿態に浪漫を夢みて海辺を訪れる男女に覚醒を強制する装置として、いまや全国の海辺に侵攻し、埋め尽くしてしまった。岡本太郎は「金平糖のように生きよ」と檄をとばし、取り込まれるな爆発せよと叫んだのであるが、その主張を実行して見せた一人がこのテトラ怪人であった。金平糖は一人が隔絶してあるなら問題はないが、集まると騒がしい状態になる。忍者が逃亡する際にばらまく尖った金平糖型の武器を思い出させる(例が古いなあ)拒絶信号を、荒波に対してだけでなく、歩行不能だとひとの足にも発しているのである。このテトラ怪人を寝床にしている生き物たちの姿はまだ見ないが、どうなんだろう。生き物の生息すらも拒絶するようにデザインされた金平糖なのだろうか。だとするとその理屈は正当であったとしても恐ろしい怪人だ。
 
 だが諸氏よ心配めされるな、自然はもっとしたたかである。引き潮の海辺にその証拠をさらしているのはしゃらくさいデザイン物なんぞ笑いとばす勢力がすでに取り付いている痕跡であった。これを希望とみるか危機の前兆とみるかは立場によるが、僕はとりあえず奇妙な美しさに感嘆してしまった。