構図(20121110・13度6:30)

 この景色を前にまず浮かんだのは、ベートーヴェン9番第4楽章で、地の底から怒りを含んでうなるように低い弦の音が湧き上がる上を慰めるような明るい音が舞って交互に織られていく部分だ。
 次にはますますひ弱になったと評判をたてられている日本に襲いかかろうとする蛮人どもとの図にも見え、古くは日本書紀時代の闘いのイメージとも思え、受容と拒絶をテーマに古くて新しい男女の問題を表した彫刻にも見えた。
 
 そして最後に物理的なことを考える。どうなんだ、これで守れるか。判断はむろんできない。例のテトラ怪人に比べると受け入れつつ馴染ませてしまおうという懐柔策にみえる。溺れたときにはワラをもつかむという、そのワラにはテトラ怪人よりは近いように見えるのだが。
 先の大津波で冠水した鉄筋コンクリートの建物ではコンクリの質によっては中の鉄筋にしみこんだ塩水によるサビが出て、一見丈夫そうに見えても崩壊に向かっているのが分かったという。テトラ怪人も日本武尊の武具みたいなデザインのこれも人工の石であるが、モトモトは鉄筋入りであっても天然素材である。これがボロになるのを見届けられる諸兄はここには一人もいない。いくらノーベル賞のiPS細胞にがんばってもらっても間に合わないだろう。
 ゆえにこれらは我々の時代の墓標でもあるのだ。