新しい修業(201310016・1度3:55)

 現役を勤め上げると過去の地位の高低に関係なく協会の下っ端から修業を再開することになる。デカイ男がマゲを結い上げていると年嵩に見えるが、じつは社会人としてはまだまだの若僧だという認識は正しい。
 東カタを撮った画面ではこれまでにもかつての大スターがそうして修業している姿を見ることができた。支度部屋への警備員としては日本最強だろう。警備員が現役と目を合わしたのを見たことがないから、そういう決まりになっているのかも知れない。人は目でも何かを言う。今日も間抜け相撲で敗者となった豪栄道に対して「何しとんじゃワレー」くらいは目で言いたいところを我慢して目を伏せている。このシーンは東の力士が敗者の時だけカメラがその背中を意味ありげに追うので見ることができるのだ。ここらへんもテレビ観戦の醍醐味で、一瞬の見所である。一瞬であるから、ねらっていなければ味わえない。ここでは山本周五郎ばりの人情話の一場が毎日演じられているのだ。
 テレビをつまらないといって見ない人は、番組にもよるが、独自の観方を獲得してないだけではないか。相撲は取り組みよりも客席や裏方たちのキビキビと働く姿こそが見所なのである。名大関魁皇の第二の人生も始まったばかりだ。よく勤めよ忍耐せよ。