2012426・・・天上の音楽(新谷記)

ベートーヴェンの9番を何としても絵本(動画)にしたいと、
時には熱狂的に思い詰めるのだけど
しょせんは妄想であるから、熱がさめると忘れてしまう。
葛飾区の水元公園のそばを歩いていたら大きな溜め池があった。
かつては農業用として造られたのかもしれないが今は釣り遊びの池に堕している。
池だから波ひとつなく岸辺の際まで住宅地である。
家の前では暇な男どもが釣り糸をたれているのだった。
うらやましいノンキさである。
住宅地全体は泰西名画が昼寝してるふうで間延びしていた。

9番の第3楽章は天上の音楽と讃えられるほどに美しい。
岩をも砕くような1、2楽章での荒々しく躍動する濁流は、
3楽章にはいって穏やかに静まり、民の暮らしの中をぬうように寄り添うように
ゆるゆると流れていく。広々とした空には雲がぼんやりと浮いて・・・・
とまあ、そんなイメージなのである。
葛飾区で3楽章の音が聞こえてきたのは意外だったが、
9番熱が完全にはさめてなかったのを知って希望が湧いてきた。

(新谷撮影)