2012623・・・怪奇映画(新谷記)

堀内さんと何度か映画を観に行ったことがある。
怪奇というか実験室ものというか。変な博士がいてビーカーなんかが蒸気をふきだす
実験室があって、怪人が出てという部類のパターン化した映画が多かった。
客の入りからして下火になってしまった部門であったように感じたが、
それだからこそ見ておくんだという、マニアめいた心意気があったに違いない。
僕がまったくそっち系の映画に疎いので見終わって特に感想も無し、
であったのが申し訳ないことである。

それより面白いのは堀内さんの映画を観るスタイルである。
これは決まって1番前の席であり、ポップコーン付きである。ビールはまだ売ってなかった。
ガラガラだから足を前の舞台に乗せてそっくり返ってポリポリやりながら観るのである。
まあこの手の見世物娯楽映画の観方としては正解かもしれない。

あるとき僕はポップコーンの油にあたったのか気分が悪くなって
街路に座りこんでしまった。すると堀内さんが
「吞めばなおるよ」と言うのである。
やってみるかといつものバーで水割りを吞んでるうちにホントに
なおってしまったから僕もいいかげんな奴である。

↑「密室の活劇」のコラムを読んでいると東京弁(江戸っ子弁?)の語調が
出てくる。例えばローラーゲームをスラム街の「出入り」と書いたりする。
このへんが堀内作文の読みどころでもあるのだ。
それはずっと後になって描いた「いりふねパリガイド」の中の吹き出し文字でも
発揮されていて愉快である。


↑「いりふねパリガイド」1976年 草思社
堀内さんが「アンアン」ADを辞し後の1973年からパリに在住して
関与したミニコミ誌。その3年間ぶんをまとめて1冊にした。