201253・・・構図好き(新谷記)

1968年に入った。もっとも原稿は67年暮に入稿済みである。
展示場での取材メモの話から入っている。手描きの字は後年のとほとんど同じで
描き文字は掘内さんの中ではスタイルが完成していたのが見えて楽しめる。
ここではカメラの普及を、美しい構図をみつけるのに長けた日本人の感性に
結びつけているのが意外で新鮮な仮説だと感じた。

68年の、時ははっきりしないが堀内さんにつかいを頼まれたことがある。
ある活躍中のイラストレーターから作品をもらってきて欲しいというのだ。
帰りのバスはすいていたので開封状態だったのをいいことに、こっそり作品を見た。
そこにはB5判の紙数枚に歴史上有名な女性の名前が大きく鉛筆描きされていた。
いかにもロゴらしい感じのラフである。

社に戻ると堀内さんはそれを僕の目の前でひっぱり出してサラリと見て
「フム」と言ったきりで机に投げ込むようにしまった。
今になって思うが、すでに水面下では平凡出版からの新雑誌の準備が
進んでいたのだろう。1年後にあの、題字の傑作が堀内さんの手から生まれることになる。

↑話にまったく無関係な作品。多摩美大の芸術祭でのスナップ。2005年。
あえて話に結びつけるとしたら構図のことではコマに想いを埋める漫画の感覚が
美大生の作品にも現れているように思う。そして愛でる僕にもそれはある。